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ざわざわと空気がざわめく。
この中学校の秩序が歩いてくる。
颯爽と靡く、学ランの二の腕の箇所には風紀の腕章。
その学ランを肩に掛けた風紀委員長、その後ろに委員会の人間が続く。
生徒達は慌てて道を開け、頭を下げる。
この学校のいつもの光景。
それを見るともなしに雲雀は眺める。
自分の秩序の支配する世界。
雲雀が支配した世界。

しかし、今日はそこに異分子が現れる。

本を開いたまま歩いてくる少女。
相当没頭しているらしく目を上げもしない。
きっと自分に気付いていないのだろう。
そのまま歩いて歩いて、あと一歩でぶつかると言うところで少女が不意に顔を上げた。


「…!!」


やっと少女は置かれている現状に気付いたらしく目を見開いて言葉をなくす。
その光景に満足して雲雀は言った。


「読書に熱心なのは感心だけど、次からはちゃんと机の上で読んでくれる?」


はい、と頷いた声に再度、満足する。


「どいて」


慌てて道を空けた少女の手元に不意に目がいった。

何とか館殺人事件。

それだけが一瞬だけ意識に入り込む、そして雲雀はまた歩き出す。
そして、きっと、数秒後には忘れる。