「わわ!!」









本を読んで歩いていると、校門で誰かにぶつかった。


「ご、ごめんなさい!!」


見れば、私はどうやら相手の荷物をばらまいてしまったようだ。


「はひ〜、大丈夫ですよ〜」


私がしゃがんだのと同時にその子もしゃがむ。
その子は緑中の制服を着ていた。


「あ、」


緑中の子がなんで?
とか考えている最中にその子がばっ、と顔を上げて手をぶんぶんと振り回した。


「沢田さ〜ん!!」


沢田君?


つられて振り向くとそこには慌てている沢田君がいた。


「お、お前!!なんで学校にまで来たんだ!」
「いいじゃないですか、将来の妻ですし!!学校でどう過ごしているか見学です」


な、なんだこのテンション高い女の子は!?


女の子の鞄の中身を全部拾ってから立ち上がると、沢田君が私に気付いた。


「あ、お前も何やってんだ?!」


私と女の子は顔を見合わせた。


「いや、ただ単にこの子にぶつかって…」
「どういう事ですか!沢田さん!」


へらへらと言い訳をすると女の子が怒鳴った。
え、ええええ!!??


「早速浮気ですか!!」


今度慌てるのは沢田君と私、二人だった。


「ち、違うよ、この子はクラスメートで、」
「そうそう、沢田君の部下だよ」
「わー!!それは違う違う!!」
「ああ、何だ部下さんですか、いつもご苦労様です!!」


ああ、微妙に三人の会話が通じてない、
でも女の子にお辞儀をされると私も思わずお辞儀をして返す。


「あ、こちらこそボスがいつも世話になってます」
「ボスじゃないったら!!」


いやあ、沢田君の突っ込みは慣れるとツボにはまるね。


「ごめんごめん、で、えっと、なんだっけ?」
「ああ、私、三浦ハルといいます」


三浦さんはそう言うとにっこり笑った。可愛い。
例えるなら事件には直接関わらなくてもいるだけで雰囲気を盛り上げる女の子みたいな。
私も自己紹介をしながらそんなことを考えていた。


「沢田さんを迎えに来ました!!」
「ええ!?俺はちょっと…」


ああ、補習があったって言ってた気がする。
私は今回はかろうじて逃れたのだ。
あの時2じゃなくて4を選んで良かった、あの問題が間違えてたら私も今頃きっと…


「何ですか?」
「ちょっと用事があってすぐには帰れないんだ。」
「そうですか…」
「そうだ、 「と帰ると良いよ!」


私!?


「いいですよ」


いいの!?


そんな訳で三浦さんと帰ることになった。








「どの辺に住んでるんですか?」
「えっと、私はバスで二つくらい行ったところ。三浦さんは?」
「ハルでいいですよ〜」


可愛い。


「うん、わかった。ハルちゃん」
「はい、それでいいです」


何となく顔を見合わせて笑ってしまった。
何で沢田君なの?とか、どこで知り合ったの?とか色々興味は尽きなかったけど、
この日はのんびりバス亭まで歩いた。
そんな話をしなくても、きっとこの子とは上手くやれる、だからまたどこかでゆっくり会うときもあるだろう。
そんなことを考えていた。
たぶんハルちゃんもそう考えてくれたのだろう、
バス亭につくとにっこり笑って、


「じゃあ、また」


と言った。

そういう友達が増えるのは、いいことだ、
いいことだと思う。