「それにしても」 と言ったのは、誰だっただろう。









夕日が照らす帰り道。


「ああ、本当に、大変だったね」


私が頷くとボスはぐったりとしてみせた。


「本当だよ…」


ボスの大活躍を私は残念ながらちょっとしか見れなかったのだけれど、
(そしておのあと乱戦になって収集がつかなくなってしまったのだけれど)それはまさに勇姿という感じだった。


「あはは、かっこよかったよ、ボス」


それにしても私はマフィアの偉い人=ボス って印象で勝手にボスと呼び始めたんだけど、
本当にこの人はイメージが違う。
マフィアのボスって黒いスーツに黒いネクタイで葉巻なんて吸って黒い大きな革張りの肘掛け椅子にふんぞり返って札束を数えていそうなのに…
つくづく、リボーンちゃんの人選は面白いと思う。
それとも、リボーンちゃんくらい小さいと沢田君でもそれぐらい堂々としているように見えるのかな?


「当たり前だ!」


沢田君の横で満面の笑顔なのは、獄寺君。彼は沢田君の横でおおいに暴れていらっしゃったらしい。
ちょっと怖いと思ったなんて秘密だ!!
大体彼は怖いと思うんだけど、どうして人気あるかわからない。話しかければ睨まれるし、授業態度は最悪だし…
いやいややめよう人を見かけで判断するのはよくない。


「ああ!?なんて言いやがった野球馬鹿!!??」


…判断するのは良くない、とは思うんだ。


「はひー、それにしてもツナさんかっこよかったですー!」


沢田君のお母さん達とは帰らず、運動会の後ホームルームとかで拘束された私たちを待っていたハルちゃんが握り拳を作ってそう言った。


「そうなんだ。残念、ちょっと見たかったかも」
「十代目の晴れ姿を見ていないなんて…!!」


ぎゃあ!!判断するのは良くないと思いますけどももうそんなことどうでもいいですきっと中身も怖いです獄寺君!


「まあまあ」


山本君は癒しです。


も頑張ってたよなー。」
「そうですね〜!華麗な1位でした!!」
「え…あ、あありがとう!」


二人はきっと徒競走のことを言っているんだろう。そう、徒競走で私はなんと1位だったのだ!!
とはいえ、タイムが似ている人たちが集まっている中では、そんなに自慢できたことではないだろうけど。
それでも我がことのように喜んでくれる二人に私もにこにこしてしまう。


「そうだよ、あれがなかったら優勝できなかったかもしれないよね」 「ボスまで!」


にこにこしてると、不穏な気配が…。


「十代目が褒めてくださったんだ、よくやったんじゃねぇの」


ご、獄寺君…!


「でも、調子ノンなよ」

「……」


やっぱり獄寺君は獄寺君でした。

そして、あっという間に別れ道につく。

沢田君、ハルちゃん、山本君が手を振る。
…ん?

んんん!?

右を見ると不機嫌そうな獄寺君。


「テメー、十代目をちゃんと送れよ」
「ご、獄寺君!!」


いやいやいや、獄寺君、何故貴方様はこちらにいらっしゃるのですか?


「ああ!?道がこっちなんだろ、しょーがねぇだろうか!!」
「はははい、すみません!!!!」
「むきー!さんをいじめたら承知しませんからね!」
「黙ってろアホ女!」


だらだらだらだらと汗が背中を伝う。


「獄寺が一緒なら安心なのなー」


安心じゃないです、助けてください山本君!!





まぁ、助けて貰えるわけもなく、やたら心配そうな二人の視線を受け(一人はにこにこしてた)、
私たちはじゃあねと言って二手に分かれた。
獄寺君は不機嫌そうに横を歩いている。
な、なな、なんで今日に限って沢田君を送っていかないんだろう…!!


「おい、探偵バカ」
「わぁ!」


私の呼び名は探偵馬鹿ですか、そうですか!


「なんだよ、アホみたいな声だしやがって……お前、家どこだよ?」
「ああ、私はバスで通っているんです」


しまった。 そんなこといったらバス亭まで逃げられないじゃないかしまった。
うまく言って道が分かれる方向を言えば良かったのに!


「バス?」
「わ、私黒曜に住んでいるんです」
「は?」
「こ、ここ、黒曜。知りません?」


獄寺君は興味もなさそうだ。だけど、私はこの話を無理矢理続ける。
イギリス人には天気の話をするとワトソン博士がいっていた!


「隣町にあるんです、並盛の。本当は黒曜にも中学あるんですけど、
距離的には並盛中の方が近いんです、だから並盛中に通っているんです」
「…ふーん」


あああ!!全然興味なさそう!


「で、バス停どこだ?」
「え…あの道を右に曲がって…ちょっと行ったところです。」
「ふーん。」


それからまら無言になり、獄寺君は曲がり角まで来ると右を見てバス停を確認?してから私を見た。


「じゃ、俺、左だから」
「あ、うん。お疲れ様」
「おう」


なぜか自然に別れた。

歩きながら私はある可能性について考えていた。
獄寺君が何故バス亭の場所を確認したか。

ひとつ。自分が送って行かなくて良いか確認した。
ふたつ。私が嘘を吐いていないか確認した。

……どちらの場合も私は過剰に反応しすぎだろうか、でも明らかにバス停の場所確認してたし…


別れた後もなぜかだらだらと背中を冷や汗が伝った。

…あ!今思い出したけど、獄寺君イタリアからきたっていってたし、天気の話は全く関係なかった!!











そこまで考えて不意に山本君が私の徒競走の順位を見ていてくれたことを思い出した。た、偶々かもしれないけど…ちょっと嬉しいかもしれない。
私の頭は帰りの間中、山本君の言葉ばかり思い出していてちょっと困った。
た、探偵の頭はこんなことに使う為にあるんじゃないのに…!