あれからモレッティさんと自己紹介しあったりして、
(それにしてもあれが演技だなんて信じられない。被害者役にはぜひ彼を起用してほしい)
師匠と山本君と沢田君に別れを告げて帰る途中。

「そう。沢田綱吉の家」

曲がろうとした角の先、聞き慣れた声が聞こえた気がしたので思わず隠れてしまった。
そして恐る恐る角から覗く。
ボスの名前、あの声・・・間違えであってほしいけど、間違えである訳もなく、そこにいたのは風紀委員長だった。
ボスが何をしたって言うんだろう。

「そう。死体がある。いつものようにうまく処理しておいてくれる」

!!

も、もしや死体ってモレッティさんのことだろうか。
ということは雲雀産はだまされているということになるのだけど・・・
このまま風紀委員(と思われる人)が現場に行ったら・・・
もしかしたらもしかしなくてもボスが大変な目に合うのでは!!
とはいえ、もしモレッティさんじゃなかったら私が大変な目に合う!

っていうか、風紀委員で死体の処理してるの・・・?

いや!今大事なのはそのことではない!!

ああ、もう、儘よ!

私が意を決して角から飛び出すと雲雀さんは携帯電話から顔を上げて私を見た。

「君・・・」
「ひ、雲雀さん!その死体は間違えです!」
「・・・どういうこと」

携帯電話を切って雲雀さんは私に対峙した。
うう・・・相変わらず怖い・・・

「ええっと、あの死体は生きていて・・・」
「君、寝言言ってるの。あの死体は僕が確認した。死んでるよ、胸を撃たれて、確実にね」
「それが生きてたんです」
「どういうこと」

雲雀さんがすっと目を細めた。
わわわ、殺される!!

「うまく言えないんですが、えっと、つまり、あの人はそれを職業にしていて・・・そう!死んだふりだったんです!」
「・・・」

雲雀さんは何かを考え込んだ後私に近づいてきた。
や、やばい!!

「本当だぞ」

その時真横にある塀の上からリボーン君の声がした。

「リボーン君!!」

ああ、不思議だ、今はあんなに可愛いリボーン君がすごく頼れる存在に見えるよ!

のいってることは本当だぞ」
「赤ん坊・・・」

雲雀さんはリボーン君をじっと見つめると、少し笑った。

「君が言うってことはそうなんだろうね」
「そうだぞ。だからは間違っていない」

雲雀さんはその言葉に私を見た。

「ふうん。そう」

雲雀さんはそのまま携帯電話をもう一度かけ、
「さっき言っていたことは、取り消しだよ」
とだけ言って、また電話を切った。
そしてもう一度リボーン君を見ると身を翻してさっさと言ってしまう。
その姿が完全に見えなくなってから私はがっくりと肩を落とした。
雲雀さんと会ったときはいつもこんなにぐったりしてしまう気がする・・・
そんなことを考えているとリボーン君が飛び降りてきたから反射的に腕を出して抱きかかえた。

「あいつを呼んだことを忘れてたんだぞ」
「あいつって、雲雀さん?」

リボーン君は神妙にうなずくと、

「放っておいてもよかったんだが、いらない死人を出すこともないからな」
「しししし、死人ってもしやほんも」

の、とまで言わずにリボーン君が私をじっと見たので、途中でその言葉を止める。
それはリボーン君の目が真剣そのものだったし、
まさか雲雀さんが人を殺したりするほどの不良だとは思えないけど一応黙っておいた。
だ、だだだって、怖いんだもの!
雲雀さんって一応中学生だよね?
でも、もしも殺人事件が起きたら雲雀さんが犯人ということだ!
心にメモしておこう。

「だからめんどくさいことになる前にフォローしにきたんだが」

リボーン君は私を見た。

「よくやったな」

わわ、誉められた・・・!

なんとなくじーんとしてると、腕の中のリボーン君が言った。

「よし、じゃあこのまま仕事後の一杯だ。コーヒーが飲めるところに行くぞ」
「こ、ここコーヒー!?だめだよ、眠れなくなるよ!」

私が言うとリボーン君は腕から飛び降りてしまう。

「大丈夫だぞ。俺はイタリアンマフィアだからな」
「またそんなこという〜」
「行くぞ」
「わ、私も?」
「金持ってないからな」

わ、私が奢るの!?

お財布の中を慌てて見ると二百七十円しかない。
コーヒー一杯が確か二百円くらいだから・・・
払えるけど、財布の中身が七十円になっちゃうよ・・・

さっきよりも肩を落とした私をリボーン君が振り向く。

「行くぞ」

・・・なんか断ることができないんだよね、リボーン君の言葉って・・・

「わかったよ・・・」

とぼとぼと歩き始めた私の肩にリボーン君は飛び乗り、上機嫌に鼻歌なんか歌った。









「二百三十円!?」
「はい、エスプレッソは少しお値段が・・・」
「・・・はい、わかりました・・・(財布の中身四十円しかないよ・・・)」
リボーン君はエスプレッソを持ってにやにやしている!