「やっといたか」

探検の途中、道の上で声を掛けられて振り向くと、リボーン君がいた。

「どうしたの?」

手を伸ばすとぴょこんと乗っかってくる。

「ツナが誕生日だからな。お前を探してた」
「あ、誕生日会?」
「そうだ。あいつも一応ファミリーの10代目だからな。 ファミリーの決まりにのっとってやるぞ」
「へぇ〜、楽しそうだね!」

ボスの誕生日会かぁ。楽しそうだな!
しかも、ファミリーどうのこうのってことは、 なんか決まりとかあるんだろうなー。
楽しそう!
わくわくとリボーン君を見ると リボーン君は冷酷に言った。

「といっても、もう全員出し物は決まって練習してるからな。 いなかったお前が悪いんだぞ」
「え! じゃあ沢田君の誕生日って…!」

リボーン君はこっくりとうなずいた。

「そうだ。明日だぞ」

あ、明日! それはとても急だな…

「今から参加って無理、だよね?」
「ああ、残念だがな」

うーん、しまった。そうと知ってればなんか用意したのに。
でも、出し物……
みんな何やるんだろう?
師匠はやっぱりすごいんだろうな!

「ぜんぜん見つからなかったけど、何やってたんだ?」

私がまたそんなことを考えているとリボーン君が首をかしげた。
えへへ、なんかリボーン君がそういう表情をするのって珍しい!
私はちょっとした優越感を感じた。
そのまま、リボーン君を抱っこして、歩き出す。
そう! なんといっても、まだ私は仕事の途中なのだ!

「じゃん! パトロールだよ!」

私は探偵七つ道具が入っているポーチを掲げて見せた。
リボーン君は首をかしげる。

「なんだそれ?」
「ふふー。秘密! このポーチは探偵にとって大切なものが入ってるんだよ!」
「そうか」

リボーン君はこっくりとうなずいた。
ふふ、かわいいなぁ!

「じゃあ特別に一個だけ教えてあげる! このうちの一つは〜、手帳です!」 「そうか」

あれ?あんまり驚いてない…むむ。

「じゃ、じゃあ」

ほかに面白いものを見せてあげようとポーチをごそごそやっていると リボーン君がそれを止めた。

「?」

不思議に思ってリボーン君を見るとリボーン君は真剣な表情だった。

「スパイは手のうちをほいほいさらすもんじゃねーぞ」
「むむ」

リボーン君が真剣だから思わずうなずく。
むむ、でも、スパイじゃないんだけどな〜。
その間違いを訂正しようか迷っていると、リボーン君がそういえば、と口を開いた。

「今日は俺の誕生日だ」
「え〜! おめでとう!!」

振り向かせて高く掲げる。
「高い高い」の要領だ!
リボーン君は私にされるがままになりながらにこにこ笑った。

「沢田君の一日前だね」
「そうだぞ」
「いくつになったの〜?」
「二歳だな」

じゃあ、今まで一歳だったんだ…
すごいな!
一歳なのにこんなにしっかりしてて、…沢田家の教育がいいのかな?

「ん? それにしても…」

掲げたまま首をかしげる。

「誕生日迎えた割にはあまり大きくなってないかな〜?」

そうなのだ、近所のお姉さんの子供は一歳から二歳になったってことになったら 体重もすごく増えたし、身長もすぐわかるくらいに大きくなっていたのだ。
リボーン君はもうしゃべれるし、歩ける…とはいえ、こんなに成長しないなんてことがあるんだろうか?
と、そこまで考えて私は自分が失言したかもしれないことに気がついた。
そうだ!!
これから成長する(であろう)子供に、私はなんてことを…!
子供の心はきっとすごくやわらかいので、傷つけられたらきっと私が思っているより傷ついちゃうのかもしれない!

「あ、でも、個人差だもんね!」

私はフォローするようにもう一度リボーン君をゆすった。

「あ、え、えと、個人差っていうのはね…」

さすがに難しい言葉だったかな、と説明しようとする私を目で止めて、 リボーン君はにやりと笑った。

「やるな、お前」

「?」

リボーン君の言葉に私は首をかしげる。

リボーン君はにやにや笑うと飛び降りた。

「さて、めんどくせーことになりそうだから、俺は帰るぞ」
「あ、リボーン君」

呼び止めて意味を聞こうとしたけれど、それよりも、聞きなれた笑い声が聞こえて来てその方向を 振り返った。

「ガハハ! 見つけたもんね!!」
「あ、ランボ君…」

リボーン君をもう一度見ようとすると、もうリボーン君はどこかにいった後だった。

「逃がさないもんね〜!!」

とたとたと追いかけようとするランボ君を引き止める。
「だ、だめだよ、仲良く遊ばないと」
「離せー! ランボさんとあいつは宿敵なんだぞー!」

しゅ、宿敵…!?

「難しい言葉知ってるんだねぇ」

いいこいいこと撫でるとランボ君は照れたように頭をおさえようとした。
かーわいい! 手が届いてない!

「きょ、今日はお前に免じて許してやる!」
「わぁ、ありがとう!」

…って、根本的な解決になっていないような… 今度沢田君に言ったほうがいいかな。

「代わりに遊べー!!」

足にしがみついてくる。

「いいよー! 何して遊ぼうか」
「とりあえず飴!!」
「はいはい」

今日も持っていた葡萄味のキャンディを口に入れてあげるとランボ君は上機嫌になった。
飛び降りて、歌いながら走っていってしまう。

「あ! ランボ君?」

遊ぶんじゃなかったっけ?

「今日はこの辺で許してやる〜!」

ゆ、許してやる?

うーん、ランボ君もよくわからないなぁ。

そういえば、この間の男の人ってなんなんだろう??
ランボ君がいなくなった代わりに男の人がいたような……

うーん、でも、まさかね……

非科学的なことなんてきっとないんだ!
そうだそうだ。
今度ちゃんと調べないとね!

「うーん、今日も何も事件なかったし、私も家帰ろうっと」

うん、と伸びをして、私も家に帰ることにした。
平和が何より!